寺町の風情と江戸の知恵
古くからの寺町として、かつては高密度ながらも調和のとれた景観だったであろうこの地は、現在では商業地としてビルが建ち並び、緑化も乏しく潤いのない景観となっています。
この地に寺町の風情と路地を巡り歩く楽しさをを取戻し、緑豊かな住環境を創出することを計画のコンセプトとしました。
そのために建物を道路から後退させて豊富な緑量を確保した前庭や、背後の寺の緑ともリンクした中庭など各所に庭を設けて「緑の鎖」を構成。生活の中で四季の彩りを楽しむ路地的なエントランス空間としました。
また「物見」「路地」「土間」「格子」「障子」など気候風土に根差した江戸の知恵をキーワードとして抽出。ファサードやエントランス、各住戸への道すがらを構成する要素のテーマとし、現代にも通じる「住むための工夫」が凝らされた居住環境であるよう努めました。