方南通り永福町近くの集合住宅。
古くから都市と郊外を結ぶ典型的な通過交通軸に面しています。
近郊に戦災を逃れてきた寺社仏閣や善福寺川公園などの景観要素はあるものの、方南通り自体には特筆すべき統一性やデザインコードまたは文化のようなものは見られず、新たに街並みに対して明確な意思を表明することが求められました。
敷地は通り側(北)が商業系、奥(南)が住居系と用途地域が混在しており、また北に対する日影配慮等により、中央を高層棟(10階)南・北を低層棟とする構成となります。
つまりひとつの建物内にタワー住戸・テラス住戸・スタジオタイプ住戸があることになります。(北側の低層棟は地権者取得の賃貸住戸であったため、トップライトで採光を確保する閉じた外観とし建物全体のゲートとしての性格を持たせました)
これらの条件によって割り出されたコンセプトは以下の通りです。
■暮らしをアートに見立て、集合住宅全体をギャラリーとしてデザインする。
■ファサードは通りに対して間口を開き、かつマッシブなボリュームとテクスチャーで無秩序な既存景観に対してデザインメッセージを発信し、街並みに秩序をもたらす。
■棟と棟の間にできるさまざまな「すきま」から光や空を内部空間に取り込む。
■テラスなどの住戸に属する「外部」を積極的に使える「外部の居間」としてデザインする。
ギャラリーの構成素材には石・金属・ガラス・木製パネル等、温度やタイムスパンの違う素材をブレンドして構成されており、人の感覚を微妙に活性させることを狙いました。
そしてアートやざっくりした壁に当たる光の演出、ショウケースのような坪庭、遠くの景色が移りこむビアンコカララの壁などを見ながら巡り歩くうち自らもアートの一部になっていることを夢想してデザインしました。