東海道南品川宿において、古くから紅葉の名所として知られた海晏寺。
その参道であった計画地は、明治以降京浜急行や第一京浜などによって分断され、長く工場として利用されてきた土地です。
またかつては至近にあった海岸線も今は遠く埋め立てられ、周辺は緑も少なく潤いのない環境となっています。
ここに192戸の住宅とスーパーマーケットのコンプレックスを計画するに際して、周囲には緑あふれる広場や歩道を配し、かつて東海道越しに海に浮かぶ帆掛け舟を見下ろした景勝地としての記憶を再現しようと考えました。
また建築のあり方も風や意識などの流れに削り出されたような形態を意識し、内外を移動しながら快さを感じる空間を目指しました。
ここでは歩くことで「時間」を感じ、過去から未来に続く潤いの記憶を継承することがテーマとなっています。
そのイメージは豊富に緑化された広場やエントランス アトリウム~ロビーを通り抜け各住戸にいたるまで、歩く人に短い旅を想起させ、かつて海岸線沿いに東海道を往来した旅人の心象を彷彿とさせるものです。