SD-House
変則的なパターンをもつファサードのルーバースクリーン:「千駄木の御林」をイメージしたもの
■かつての情景に想いを馳せる
文京区千駄木五丁目。

この界隈は上野寛永寺の廟所造営用の木材を提供する「千駄木御林」として明治初期までは武蔵野の面影を残していました。

本郷台地の一翼をなし遠く品川沖を遠望できたといい、その景観を愛した大名の下屋敷や、文豪 森鴎外の居宅「観潮楼」などがあったことからも、調和のとれた潤いのある環境があったと想像されます。

現在も周囲には寺社が多く残り、また敷地から根津神社へと続く裏道などに当時の面影がかろうじて残るものの、残念ながら現状の周辺環境には往時の潤いある環境は見当たりません。

歩車分離の不十分な街路、圧倒的に少ない緑地、景観の不調和など、環境的且つ審美的に悲観的な状況であることが現地を見た第一印象でした。

この地に108戸の集合住宅を計画することは、この環境に少なからぬ規模でかかわりをもつことになり、何も工夫をしなければ現在の悲観的な状況をますます増大させることになりかねません。

こうした状況から手探りで場の文脈を調べる中、前述の地歴が形のない宝物のように思われ、かつて寺社と御林、そして眺望がバランスよく景観を形成し、人々が往来していたころの「潤いの記憶」を現代の手法によって「再生」することをテーマにしたいと考えました。
■構える~都市景観に奥行きを与えるルーバースクリーンのファサード
「千駄木の御林」をモチーフとした再生木ルーバーのスクリーンをファサードに配し、エントランス空間と街路を柔らかく連続させることで都市景観に奥行きを与え、内外双方の空間の豊饒化を意図しました。

昼間は高木の葉陰がスクリーンに写り内部空間にも風の揺らぎなどを感じさせ、夜間は内にこもる明かりがあふれ出して街路に住宅の安らぎのイメージを発信します。
■迎える~静寂の世界へ
街路の喧騒からルーバースクリーンをくぐると静寂の空間が迎えます。

明暗を強調した演出によりオンからオフへの切り替えの場となります。




■導く~光の断層
不規則な光の断層。

時空の裂け目を感じて過去の情景に想いを馳せる空間です。

格子戸の奥に垣間見えるかつてこの地にあったかもしれない情景。
■放つ~年月を経て遺構と絡まりあう自然の彩りに意識が開放される
静寂の空間をへて外界とは切り離された自然の彩りを感じる空間。

水盤を模したオブジェの鏡面が景色を増幅して眼に飛び込ませると同時に、意識を外界へと開放します。

公の世界から私的空間へいざなう時間を超えた小さな旅をイメージしました。

竣工写真
アプローチ夕景
エントランスホール
ラウンジ夕景
中庭夕景:ガラスオブジェは板橋一広氏による雪花ガラス
南西側ファサード昼景
中庭オブジェ壁の質感とディテール
 
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